防災士(3)

9月8日、名古屋市で記録的な大雨が降りました。名古屋市では1時間に104.5ミリの雨を観測し、2000年の東海豪雨の97ミリを上回ったそうです。

名古屋にはベルギー人の友人が住んでいるので、ニュースを見てすぐに連絡しました。友人が住んでいる地域では大きな被害はなく、無事だという返事がありましたが、道路が川のようになり、車が水の中を走っている映像を見ると、とても同じ市内とは思えませんでした。

さらに9月21日には、台風の接近によって関東でも大雨となり、千葉県や神奈川県を中心に道路や住宅の冠水、土砂災害が発生しました。わずか2週間ほどの間に、名古屋と関東という日本を代表する大都市圏で、同じような冠水が起きたことになります。

前回の記事では、ハザードマップについて書きました。洪水や土砂災害など、災害の種類によって安全な避難場所が変わり、避難所だけではなく、そこへ向かう経路も確認しておく必要があるという話でした。

今回の大雨を見て、もう一つ確認しておかなければならないことがあると感じました。それは、普段利用している道路です。

大雨による浸水というと、川が堤防を越えてあふれる様子を思い浮かべます。しかし都市部では、川が氾濫していなくても、短時間に大量の雨が降ると下水道や排水施設の能力が追いつかなくなり、道路に水がたまります。これを内水氾濫といいます。

特に危険なのが、道路や鉄道の下をくぐるアンダーパスです。周囲より道路が低くなっているため、短時間に雨水が集まります。

名古屋市が管理しているアンダーパスは30か所ありますが、9月8日の大雨では、そのうち19か所で冠水による通行止めが発生しました。半分以上が一度に通れなくなったことになります。

アンダーパスに入る前は、少し水がたまっている程度に見えても、中央部分は思っている以上に深くなっている可能性があります。雨が激しく降っていれば、車を進めている間にも水位が上がります。

ニュースの映像では、冠水した道路を水しぶきを上げながら進む車が映っていました。運転している人からすれば、ここまで来たのだから通り抜けたい、前の車が行けたのだから自分も大丈夫だと思うのかもしれません。

私も以前なら、車高や水深を見ながら、これくらいなら通れると考えていた可能性があります。しかし、実際には水の中では道路と側溝の境目が見えません。マンホールのふたが外れていることもあります。また、水深が車の床面を超えると、電気系統の故障やエンジン停止の危険があります。水深がそれほど深くなくても、速度を上げて走れば、自分の車が起こした波によってエンジンに水が入ることがあります。

つまり、冠水した道路を前にしたときに考えるべきことは、「通れるかどうか」ではなく、「引き返せるうちに引き返す」ことだと思います。

車は雨や風を防いでくれるため、災害時にも安全な場所のように感じます。しかし、エンジンが止まり、電気系統が動かなくなれば、今度は車内から出られなくなる危険があります。ドアの外まで水位が上がると、水圧でドアを開けることも難しくなります。

万が一に備えて、車内には緊急脱出用のハンマーとシートベルトカッターを置いておく必要があります。ただし、トランクや工具箱の奥に入れていては、緊急時には取り出せません。運転席に座ったまま手が届く場所に置いておくことが大切です。

今回、名古屋と関東の冠水被害を見て、私も自宅から会社、自宅・会社から最寄り駅までの経路に、アンダーパスや周囲より低くなっている道路がないか、改めて確認しようと思います。いつも通っている道だから安全とは限りません。大雨の日には、遠回りになっても別の道を選ぶ判断が必要です。

雨を止めることも、道路の冠水を防ぐこともできません。しかし、危険な場所に近づかないことや、引き返す判断を早くすることはできます。

災害が起きてから正しい判断をしようとしても、そのときには時間も気持ちの余裕もありません。普段使っている道路のどこが低いのか、どこで引き返すのかを、雨が降っていないときに一度考えておくことが大切だと思います。

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