防災士(2)

前回の記事から、すっかり間が空いてしまい失礼いたしました。

「次回はハザードマップについて」と書いておきながら放置していたところに、7月28日の熊本地震がきました。マグニチュード7.1、最大震度7。熊本県内で震度7が観測されるのは2016年以来だそうです。

ニュースの映像を見ながら、講座で聞いた話が急に生々しく思い出されました。前回の(1)から忙しさを理由にして更新がとまっていたことを深く反省し、遅ればせながら続きを書かせていただきます。

講座のハザードマップの時間は、架空の町の地図が配られるところから始まりました。海があり、川が流れ、堤防があり、住宅地と学校と役場が描かれている。ここで津波が来たら、堤防が決壊したら、どこへ逃げますかという演習です。

私は避難先として4か所を塗りつぶし、答え合わせではほぼ正解でした。正直、少し得意になっていました。ところが解説を聞いて、その気分はすぐに引っ込みました。

私が選んだ場所の一つに、山の上にある大学がありました。標高が高く、津波の避難先としては確かに優れている。しかし市街地からは遠く、そこへ至る道は山道です。大雨のときは土砂災害の危険があり、地震のときは崩落や落石で通れなくなるかもしれない。つまり、津波には強いが、他の災害では使いにくい避難先だということです。

避難先は一つに決めておけるものではなく、災害の種類の数だけ考えておかなければならない。頭では分かっていたつもりでしたが、地図の上で自分が実際に選んだ場所を指摘されると、理解の浅さがはっきりしました。

もう一つ印象に残ったのが、浸水想定の色の濃淡です。地図の色は危険度のグラデーションではなく、想定される浸水の深さを示しています。0.5メートル未満、0.5〜3メートル、3〜5メートル、5〜10メートル……と区切られている。0.5メートルを超えると1階が床上浸水し、3メートルを超えると2階まで浸水する目安になります。そのため、3メートルを超える区域では、原則として立ち退き避難が望ましいとされています。「2階へ逃げれば大丈夫」かどうかは、自宅の色を見れば事前に判断できるということです。

講座を受けてしばらく経ってから、会社の近くのハザードマップを確認してみました。橋本市が公開している高野口地区の水害ハザードマップです。

見て驚いたのは、拠点避難所の一覧表でした。避難所ごとに「風水害時の安全レベル」と「地震時の安全レベル」が別々に記されていて、同じ避難所でも災害によって扱いが違うのです。たとえば高野口小学校と橋本市産業文化会館は、地震時には避難所として開設されますが、風水害時の欄には「×」が記されています。避難所として指定されていても、どの災害でも使えるとは限らない。安全性は星の数と注記で4段階に分けられていて、「土砂災害や浸水が発生しても十分に安全」から、「大規模災害が想定される場合には事前に開設しない、または危険が迫れば閉鎖する可能性がある」まで区別されています。

講座で聞いた「山の上の大学」の話が、そのまま自分の地元の地図の上にありました。

もう一つ、浸水の深さとは別に「家屋倒壊等氾濫想定区域」という区分があることも初めて知りました。河岸侵食は増水した流れで川岸が削られて家屋が倒壊・流出するおそれのある範囲、氾濫流は溢れた水の流れそのもので家屋が倒壊・流出するおそれのある範囲。ここは水位に関係なく、早期の避難が必要とされる区域です。浸水深だけを見て「うちは1メートルだから2階で大丈夫」と判断していたら、見落としていたところでした。

なお、このマップの浸水想定は、紀の川の橋本地点上流域で2日間の総雨量678ミリといった条件で解析されたものです。また、内水氾濫とため池は対象外と明記されています。一枚の地図がすべてを教えてくれるわけではない、ということも含めて確認しておく必要があります。

今回の熊本地震について、地震調査委員会は活動の分布が日奈久断層帯の一部に沿っていると指摘した上で、割れ残っている部分では将来的に大きな地震が起きる可能性が十分にあると結論付けています。断層は熊本だけにあるわけではありません。次はどこで、とは誰にも言えないからこそ、地図を見ておく意味があるのだと思います。

この記事を読んでくださった方は、ぜひ一度、お住まいの自治体名と「ハザードマップ」で検索してみてください。防災士の講座で学んだことのうち、今日からできて、お金もかからず、最も効果が大きいのは、たぶんこれです。

次回は、備蓄と非常持ち出し袋について書きたいと思います。今度はもう少し早く更新します。

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